王国/アンテ
 

言葉の王国には
言葉の王様が住んでいて
ある時は
言葉の災いや悲しみに弄ばれ
時には言葉の民や王妃が
言葉の命を落とし
またある時は
言葉の試練が押しよせ
みんなで言葉の手を取りあって
言葉の苦難を乗りこえ
言葉の笑みで満たされた
言葉の日が暮れて
言葉の街が寝静まっても
言葉の王様ひとりが眠れずに
じっと言葉の静寂に耳をすませ
ようやく言葉の朝がくると
すべてがもとにもどり
言葉の一日がまたはじまった
言葉の過去は消えることなく
言葉の心に降り積もり
言葉の王様のなかで大きく育っていった
重みに耐えきれなくなって
ついにある日
言葉の王様は一人き
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