苛夢/松本 卓也
随分と久しぶりだね
何の用だい?
君と最後に会ったのは
かれこれ3年以上前
顔も声も温もりも
何もかも忘れかけていたよ
笑ってばかりいないで
何か言っておくれよ
そう 僕の知る君は
いつもそんな笑顔で
僕の我侭を受け流して
一度も抱かせてくれなかった
ねぇ何しにきたの?
僕は君を忘れたいのに
君はこうやって僕の記憶が
君を過去に置いやるよう
思い出さなくなった時
決まって現れるんだね
あの頃と変わらない笑顔
あの頃と変わらない声
あの頃と変わらない言葉
あの頃と変わらない瞳
あの頃と変わってしまったのは
何も無いとでも言いたげに
数えるほどしか繋がなかった
指を絡めてくるのは
君が現実 存在しないから?
モザイクがかった群像と
ぼやけた背景に溶け込んで
君はあの時と同じように
僕を突き放しながら
静かに微笑んでいるだけ―――
2005/9/30 筆
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