海になる/岡部淳太郎
 
は私自身でさえも脅えさせる
私のずっと底には表面からはうかがい知ることの出来ない
 山や谷
私自身でさえも知らない魂の状態が隠されている
私は時に船を壊す
私は時に船を穏やかに通過させる
私の上を行く者は
常に私の状態に気を配っていなければならない
だがあなたは恐がらなくても良い
私は大きい
私は海
あなたは小さな揺籠で
赤子のようにあなたは私の上を漂っていれば良い
海の色を決めるのはあなた
私はあなたの小さなひと声に敏感に反応する
時に私は灰色の混乱
時に私は白い怒り
だが いまの私は青い
青い海
あなたを求める憂鬱の青
あなたを思う美しい夢精
私は私自身の液体の中で窒息する
海になる
海である

多くの変化を私は見てきた
見知らぬ他人が船を漕ぎ出していた
見知らぬ自然がこの星を造形していた



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