缶入りココアのプルトップに/秋月 笑
初冬の恋は
にぎやかなコートの群れの中
熱い缶入りココアのプルトップに
手をかけたときの ぬくもり
初冬の恋は
星が目を開く夕暮れ
夕飯の匂いに顔をほころばせる
窓越しの台所の灯の やさしさ
初冬の恋は
待ちくたびれて
バス停の前 ひそかに吐いた
真っ白な寂しいためいきの はかなさ
初冬の恋は
さよならしたあと
振り返ることもなく去ってゆく背中を
そっと見送っている さびしさ
どこか色のうすくなった町なみが
ひっそりと空を見上げている
かの人を想う たったひとり
月さえ泣き出しそうな 十一月の夜
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