はブラシ/黒田康之
 
はブラシが毛羽立ってしまった
もうすぐ今年も終わろうとしているのに
はブラシが毛羽立ってしまった

夏に出張に出かけた折に
買った
青い
はブラシ

彼が僕のそばにいる間に
僕はたくさんのものを食べ
僕はたくさんのものを飲んだ
それらの行き場のなくなったカスを
彼は朝夕手ていねいに掻き出してくれた

夏に出張に出かけた折に
買った
青い
はブラシ

彼が僕のそばにいる間に
僕はたくさんの人と出会い
僕はそれなりに本も読んだ
それらの行き場のなくなったカスを
彼は朝夕ていねいに掻き出してくれた

はブラシが毛羽立ってしまった
もうすぐ今年も終わろうとしているのに
はブラシが毛羽立ってしまった

生きていくとは離別なのだろう
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