きゅうりの恋/ZUZU
 
今日もきゅうりは
もてなかった
女のこたちの気ままな指で
もがれてみると
ぽきんと折れた切り口には
みずみずしい
ひかりがあふれていた

うちに帰ってきて
冷たい水で
顔をごしごしとあらうと
いろんなことばの
かたい結び目が
手のひらをひっかいて
心地よい傷がいっぱい

なにを着ればいいのかわからなかった
なにをしゃべればいいのかわからなかった
どこで笑えばいいのかわからなかった
どこで泣けばいいのかはちゃんとわかった

でも泣かなかった

今日もきゅうりは
もてなかった
時間だけがしろい塩のように
うんと残された
もう来ない季節を待つのはやめて
おいしい
つけものになることにした





戻る   Point(4)