みどりに みどりに/木立 悟
 
裾まで連れてゆく


握るでもなく ひらくでもなく
双つのみどりの手のひらは
互いの願いに溶けあって
草の踊りと歌の輪のなか
降りてくる空を見つめている


雨と雪のはざまの中庭
地の高さが
屋根の高さに変わる午後
羽は羽のかたちにあふれ
水を巡る道を飛ぶ
分かちがたいうるおいの道を飛ぶ


いろは染みこみ いろは消えゆき
目の奥に肌に髪の毛に
みどりだけがぽたりと残る
選びたくないのに選んだ指の
涙のように ぽたりと残る


光をわたすものの手は
光をかえすものの手は
傷から生まれる川をふちどり
それは遠い手紙となって
ひとり歩むものの想いを
みどりにみどりにしたためてゆく








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