書きかけの詩を描き続けよう/松本 卓也
長袖に染み込む空気は
もう安らげるほど
涼やかじゃないんだと
何気ない十一月の黄昏
駆ける自転車の上で
小さく身震いをした
二十七年目の誕生日まで
あと半月といった所
眠り足掻くだけの休日
安息の無い夢を見て
ふと気が付いてみれば
今日も同じ日曜日だった
何を残し成したかなんて
考えるのは若すぎるかな
そう誤魔化して過ごすうち
またしても迎えようとする
多分今年も独りの誕生日
慣れているように思う
怖がっているように思う
本当の気持を隠すなんて
どれだけ容易いものだろう
明日僕はまた道化をまとい
意味も無く笑って悔やむだろう
書きかけの詩に今日も一言
綴られた言葉はどれも哀しく
いつからか拗ねた文句が並んで
遡る過去にあった光さえ
くすんで褪せているけれど
すれ違う子供の笑い声のように
寒空を楽しむ余裕を描いて
いつか埋め尽くされるノートに
ささやかな幸福を描けるかな
明日何を描くかなんて
僕には分からないのだから
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