「おかえり」を君に/薬本 祝人
 
色の抜けてしまった部屋
一人で静かな不安定

案外几帳面な冷蔵庫の中や
案外不揃いな洗濯物の干し方
そんなことさえ愛しい

お日様の光は残酷だ
朝が濡れ
渇いたのどに
ゴクゴクと
沁み込んでくる

君の寝顔は
どんな映画よりもステキな映画で
君の寝息は
どんな音楽よりも心地よい音楽だ

僕の
深い切ない溜息を
君は
隣で全部吸い受ける
それを
僕の知らないところで
吐き出している
君はまだ帰らない



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