鬼塚時計店/第二次テーブルマナー
 
寸元気になったわちかちかするけど、
・・・って信号かーい!!
 
 にゃーっと交差点を渡って私は朝靄の中を走った。私は幼い時分、枕から聞こえる音は機関車の蒸気がひゅっぽひゅっぽいう音かと思っていた。

  「死への道 ふむその一歩の 踵まで ぜんまいの音は いつまで響く」

 白け始めた空はあたしの細い身体を朝靄に透かして見せた夢うつつな歩道の上のむきだした自転車のチューブは唯唯破裂しそうな私の心模様であって、自分の殻を破れない苦しさに酔うハレンチな友人ののみ子をあざ笑う気持ちと、まつ毛にかかる前髪が露に濡れてゆく。
 欠伸をしすぎて涙が朝七時露と耳に流れた。ビジネスホテルの二階の窓から、琴の音色が聞こえてくる。

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