幻獣/たもつ
 


野を渡る風が表皮をなぞると
確かに私たちからは
生きているものの匂いがする

ひれ状に並ぶ背中の突起物にさえも
既に意味は付与されているのだ

と、唐突に閃光が走り
どこか、という特定されない場所で
また誰かの空が陥落していった

木漏れ日のある初夏
まどろむ私たちの目は
瞑られるためにあった



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