幻獣/
たもつ
野を渡る風が表皮をなぞると
確かに私たちからは
生きているものの匂いがする
ひれ状に並ぶ背中の突起物にさえも
既に意味は付与されているのだ
と、唐突に閃光が走り
どこか、という特定されない場所で
また誰かの空が陥落していった
木漏れ日のある初夏
まどろむ私たちの目は
瞑られるためにあった
戻る
編
削
Point
(12)