天地獣響/木立 悟
狼なのか羊なのかわからない
未分化のけだものの死体から
焦げた巨大な羽が伸び
夜の風にたなびいている
夜より暗くたなびいている
道端で死んでいた男の手から
俺は世界を得たはずだった
強くそして弱い世界を
けだものの下腹のような世界を
(とび出ていようが くぼんでいようが)
無駄のなかにかがやくかがやき
むなしいのにうれしい
うれしいのにむなしい
不可解なまばゆさの高みから
夜が俺を見下ろしている
姫のように見下ろしている
けだもののからだの内に残る矢は
自らの手で射ち込んだ肉の矢だ
それは夜の風のように鳴る
それは夜の風とともに哭く
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