温い雨/
松本 卓也
庇から零れた一滴
微かな時間を奪われて
誰も気付かぬ苦笑い
皮肉を孕んで頬濡らす
眼鏡に張り付く七色が
淀みを儚く映し出す
娼婦の囁く愛の歌
路上に輝くガラスの破片
雨音と詠う啜り泣き
排気に隠す白吐息
笑顔にくすむ夢忘れ
剥がして滲んだ傷を舐め
傘も忘れてとぼとぼと
嘯く言葉を偽って
伸ばした指先触れたのは
何故だか温い冬の雨
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