でぃあまんて/落合朱美
 
探した

片手に軽くおさまるほどの銀のボンボニエールは
思えばこれは亡き祖父が皇室の風習を真似て
二十歳の誕生日に贈ってくれたもの

中にはしかしあまりにもみすぼらしく変色した
銀の指輪が無雑作に転がっていて
小さな五八面体は紛れもないイミテーション

指輪はやはり二十歳の誕生日に彼がくれたもの
ぶっきらぼうに差しだされた愛を受けとめるには
私はすこし幼すぎたのかもしれない

あの頃左の薬指でくるくる回るほどだったそれが
今では第二関節で止まってしまうことが可笑しくて
忍び笑いをしながら私は指輪を磨いてみる

あの時彼と永遠を誓うことは出来なかったけれど
この指輪の輝きはたしかに
私にとっては最高のでぃあまんてだった





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