でぃあまんて/落合朱美
 

きわめて無機質なショウケースは
その中が厳重な保護下に置かれていることを物語り
光の粒が華やぐ中に一際大きな輝きが鎮座していた

限りなく透明なラウンドブリリアントカットは
冷ややかな気高い微笑を湛えて
誰も迂闊に触れることなどできはしない

この貴婦人を創り上げるために
多くの男たちが額に汗して鉱山を掘り起こし
選び抜かれた職人が細工を施し磨き上げたのだろう

高貴な宝石は愛と欲の交錯の中に生まれ
輝いてなお数多の女たちの欲望や
男たちの虚栄を満たす


手に入る筈もない輝きを瞳に焼き付けて
ため息とともに部屋に帰った私は
ふと思い出して本棚の上段を探し
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