「月触」/shu
 
抱き上げられない重さを掻き毟り
沈みきれない深さに溺れ
空を見上げれば死ぬ深海魚の瞳を見れば
次元を違えるように
月を二つに割っている

音と言葉との交尾の連続に
時は入る余地もなく
溢れそうな無形の何かは
嘘に薄められた距離の狭間を
漂うばかり

撃ち込め
撃ち込め
透明な無音の世界に

言葉の表面張力が震え破れ
声にならぬ叫びがお前の紅い唇から漏れ
完璧な死の種がその対極の月の隙間に根付き
ひとつの完全な宇宙となって解き放たれるまで
近づかず
離れず

満たされた月の輪郭をなぞり
お前の白き指に触れる 
その時を

戻る   Point(6)