優しい機械/岡部淳太郎
 
、機械の言うままに姿勢を直そうとする者
が現れても、不思議ではない。近代の自由が、
近代の頭脳が発明した機械によって、奪われ
る。そのことの皮肉を言葉にこめてうたおう
とすると、私の背後で、正しい意思が私をと
らえて向かわせるのだ。正しい姿勢の、静か
な夜明けの方へと。

やがて、私の詩もまっすぐに直されてしまう。
背後で機械は、優しい痴呆の笑みを浮かべて
いて、目の前の机には、均された荒野が広が
っている。



(二〇〇五年十一月)
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