初産/むらさき
 
3歳の夏にわたしは赤ちゃんを産んだのだった

やわらかい栗毛を愛おしいと思った
乳母車はわたしの筋力のなさをあざ笑ったが
幸せな光はいつもわたしの頭上で放たれていた

母親になる幸せを誰にも教わらずに感じ取れたのだった

フォークとナイフが使えるようになる前に
アメリカの首都が言えるようになる前に
知らない人に優しくふるまえるようになるずっと前に
男の子を好きになるずっとずっと前に

わたしの赤ちゃんをみんなが見に来たのだった

黄色いバラの花束を持ってきてくれたおばさんや
お中元のオレンジジュースを分けてくれたおじさんを
わたしは一人残らずみんな愛するようになっ
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