笑う/恋月 ぴの
飲みすぎたアルコールとともに吐き出した
苦しみも 悲しみも 寂しさも
苛立ちも 憤りも何もかもが
それはもう呆気なく
それはもう大きな渦となって
便器の穴から消えてゆく
吐き出した 苦しみも 悲しみも 寂しさも
苛立ちも そして 憤りも何もかもが
単なる気まぐれに過ぎないのだから
口許についた吐瀉物と涎をハンカチで拭い
歪んだ顔を三角容器から拾った仮面で隠すと
化粧室の傾いだ扉をゆっくりと開く
そこは喧騒の坩堝 そこは淫猥の坩堝
自分勝手な言葉を酔いに託けて飛ばし合う
誰も聞いてはいない 誰も理解しようとしない
ただ そこにあるのは一方通行の満足感と
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