夏風邪のカルピスウォーター/野島せりか
 
渇いた口から取り出す体温計は砂臭い
剥げかかったマニキュア
むわっと立ち込める暑さの中で
激しく咳き込んで 頭痛をこらえていた

今日の私はやりたい事がたくさんあったのだ
昨夜着替えたパジャマも洗濯したいし
この汗まみれの布団も干したいと思っていた
仕事だって休んでいるというのに

寝返りをうつと 3日前に失くしたピアスを
本棚の下に見つける
捜していた時には見つからない
今日一日で立ち込める埃を気にしながら手を伸ばして拾う

荒々しく窓を開けると ワイルドストロベリーの実が
鮮やかな赤を私につき返す

何か飲みたい
冷蔵庫のカルピスウォーター
あの頃のよう
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