アヌビスの胎児/The Boys On The Rock
 
いつからだろう
その存在に気づいたのは?
私の中に巣食う胎児
人知れず老いの速度で嵩を増し
禍禍しい誕生の日を待っている
(それは私の終焉の日でもある)
蓮を被った哀れな子供
血まみれの下半身
生まれなかった弟
黄泉津醜男
蒼ざめた分身
である彼の頬には
私と同じ靨(えくぼ)が刻まれている
(近親憎悪は即ち自家撞着)
胎脂に濡れた皮膚
浮き上がる静脈の運河
佝僂病の背中を丸め
土葬を模して折り畳まれた足を
両棲類のもろ手で抱えながら
血の気の失せたまぶたを
腑分けした蛙の心臓のように痙攣させる
孤独死した老人の
閉じるために存在するまなこは
私の存命中
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