タレー 5/狸亭
もう何年もおまえをまっている。
とてつもないながい時間がすぎて、
過熱した脳がすうっと凍結する。
雨のはげしくふる朝、ぬれねずみのおまえがやってきて、
にっこりわらう。ラオスとの国境ちかくにある、
北のいなかパヤオから二昼夜かけて、
水平に、ひたすら水平に野をはしってくる。
がたがた道をものともせずに、路線バスにゆられて。
歴史のとおい彼方から垂直にのびてくるいのち。
ひとすじのあかい血を胎内にひめておまえの目は、
南のタレーをみつめている、そこにみる秘話。
ものがたりはひぐれの太陽のようにタレーにおち、
はるかに、水平にのびて、ひろがる潮のあわ
ふかく。垂直にしずんでゆくふたりの媾和。
(押韻定型詩の試み 37)
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