きんいろのうた(朝とけだもの)/木立 悟
ざらざらと走り
たどり着く
水のなかの火に
たどり着く
風は街の目をすぎてゆく
夜に似た朝
光の粒たち
道の先の先に降る
水平線を照らす雨
暗く大きなけだものが
影を残して駆けてゆく
道からあふれるすばやい姿で
近くに満ちては遠去かり
遠くに満ちては消えてゆく
なぞっている
風がていねいに
とどまらぬけだものを
なぞっている
ひとりのかたちを
冷たさのかたちを
なぞっている
影の集まる曲がり角
光の粒はまわりつづける
操るように
操られるように
灰に緑にまわりつづける
空のからだに響く色
たわむれの赤
たわむれの青
午後も夜もなく朝になる
燃えあがる鏡の曇になる
遠くを歩む淡い子の
静かな手のひらに緑は満ちて
走りつづけるけだものを映す
いつか会い
いつか離れ
求めさまようことを知りながら
朝にひらかれる子の手のひらは
きんいろにきんいろにかがやいてゆく
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