ボレロに耐える−めざせ最強ミーハー/佐々宝砂
、何もかも面白がるつもりの最強ミーハーになるためには、それなりの修練や学習が必要だ。最強ミーハーは、小学一年の生活科の教科書を読んでも喜ばなきゃいけない。インターネット上のポエムを読んでも喜ばねばならんし、映画「北京原人」を観ても喜ばねばあかん(ま、ネットの詩はいくらなんでも「北京原人」ほどにはひどくないので同列にするのはあまりに失礼なんだけど許して)。私は大バカに耐える鈍感さと、キッチュなものを見つけて大喜びする無責任な鋭敏さを養わなきゃならない。むろんバカなものだけを相手にして喜ぶのではただのアホだから、きちんとした教養も身につけなきゃいけない。古事記を読んでも喜ばなきゃならない。現代詩手帖を読んでも喜ばなきゃいけない。古典や優れているとされる芸術の中にバカを発見し、流れゆくネットの使い捨て文章のうちに宝石を発見する、それが理想だ。あなたがそうする必要はない(やってもいいけどね)。私が喜ばねばならんのである。なんのために? さあ。私がそうしたいから。大喜びでのたうちまわりたいから。何もかもを好きでいたいから。
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