雨の子 ?/木立 悟
雲の日
風が強い日
ひろく浅い水たまりに
壊れた傘が幾つも沈み
鳥の化石のようにはばたく
こころもち静かに
午後をあおいで
ざわめく胸をひらく
遠い雲の連なり
ときおり走る光
造られた川のむこうから
ゆるやかな灰色のやり方で
雨は町に入り込む
道を走る水
左目にだけ映る海
とどろきとささやきの
源を告げている
雨をわたる鴉
土の光に照らされる木
町のむこうに原はまたたく
濡れた指の間から
ひとつの色の空を見て
ひとりのはばたき
ひとりの午後
鏡に映る目のなかを
雨を映す目のなかを
名を呼ぶように過ぎてゆく
ひびきのように過ぎてゆく
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