追 憶/藤原 実
 
ピカソの絵のおとぎばなし
に耳をかたむける
今夜は月が半分かけている

狭い門をくぐると
ひとり占いする女
古い木のテーブルの上
その手のなかの
おどろくべき神話

ランプのほかげを
女神たちに捧げる

 「むかし
  わたしに詩を教えてくれた
  おっさんの歴史
  を語ろうとおもうのだが」

森の中に踏み迷うと
月明かりが水面(みなも)照らす湖に
ちいさな象がすがたを映して
はかない人のことを
かんがえている
そのわきを通って
メッセンジャーは
薄氷を踏みながらやってくる
そのように美は
わたしをおそう

 「尊い聖者の
  祈
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