追 憶/藤原 実
ピカソの絵のおとぎばなし
に耳をかたむける
今夜は月が半分かけている
狭い門をくぐると
ひとり占いする女
古い木のテーブルの上
その手のなかの
おどろくべき神話
ランプのほかげを
女神たちに捧げる
「むかし
わたしに詩を教えてくれた
おっさんの歴史
を語ろうとおもうのだが」
森の中に踏み迷うと
月明かりが水面(みなも)照らす湖に
ちいさな象がすがたを映して
はかない人のことを
かんがえている
そのわきを通って
メッセンジャーは
薄氷を踏みながらやってくる
そのように美は
わたしをおそう
「尊い聖者の
祈
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)