もずくの藻屑/F (from send-ence)
もずくの藻屑になると言って
何処にでもいる学生という職業の彼は
もうすぐやってくるであろう致命傷を避けるかのように何処かへ姿を消した
もずく単体なら自ら進んで食べる彼だが
幼い頃食卓に並べられるもずくは皆、酢というコーティングが施されていた
「もずく酢にしないでっていつも言ってるやん。」
少し怒り気味、いや半分諦め気味に彼は言う
「何言ってるの。お酢は体にいいのよ。」
一言一句異なることもなく同じ言葉を繰り返す母
酢が嫌いなわけではない
というかむしろ好きだ
しかし、もずくとハーモニーを奏でようとしたとき
彼にとっての絶対的存在であるもずくが
酢に後れを取
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