我儘な祈り/有邑空玖
寂しがり
嘘つきで
夕暮れにも泣いたりしない
強がって
爪先で
ねえ、
迷いくらい蹴飛ばしてよ
君の笑っているところが見たい
赤信号
一番星
黄昏の寂しさ
世界は美しいね
酔芙蓉の淡紅(うすくれない)
閉ざされたプール
茅蜩(ひぐらし)が鳴いて
夏が終わってしまっても
痛いくらい握り締めた僕の掌には
君がくれた形のない約束
何処にも行かない
忘れたりしない
でも磨硝子みたいに不透明な明日
君の困っているところを見たい
お祈りみたいに目を閉じて
十(とお)数える
次に見える世界にも
どうか
君が居ますように
初出:「言鳴」にて朗読。
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