詩を読まない詩人への手紙/岡部淳太郎
。それは、決して無駄なことではないよ。
いま、君は、自分の生まれついての才能の赴くままに書いているだけなのかもしれない。でも、どんな人の場合も、才能というものには限界があるし、春の嵐のような詩作の大波が過ぎ去ってしまえば、君は詩を書くことの困難を感じることになるに違いないんだ。もし、そうした大量詩作の時期が過ぎ去ったとしても、人の詩をたくさん読んでいれば、詩の歴史の中に深く分け入っていたら、多くの詩を読んできた読書体験が、知らず知らずのうちに心と頭と身体の中に蓄積されて、詩に対する困難を感じる度合いも少しは減少すると思うんだ。つまり、蓄えがあった方が安心というわけさ。
飽くことなく詩を書き
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