月と燐粉/唯川
 

すこしさむいようで
身をよじって蛾
とんでいきます くらがり闇夜
まんまるをでんせんがつらぬいて
そして貼りついていた 空に

いたそうだ
兎はちんもくしていても
にじむ朧の鮮血
わたくしを刺している方は
電線なのか
伝染でしょうか



流行歌のせいで
すり減らし 地に落ちた
さよなら

吐き出して呑み込んで嗚咽する
吐き出して呑み込んで嗚咽します
あなたの燐粉でふたたび浮かばれるでしょうか
蛾よ



まんまるも沈んだ

君は新月と呼ぶのか
まだ すこしさむいようで
わたくしはとしゃぶつと幻想にくるまれる

蝋燭を見てごらんなさい
羽根が 燃えている
斑点が 泣いている
とてもとてもあたたかそうで
もう苦しそうに震えなくていい
蛾よ



鋭利な復讐者
こんどはでんせんが



燐粉はわたくしを天へ連れていきません
燐粉はわたくしを天へ連れていきません
ただ灼かれるのみで
やはりまだ
すこしさむいようだ
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