旋律を奏でられない僕だから/松本 卓也
呟いた台詞をどれだけ記しても
書き殴った言葉をどんなに叫んでも
僕の声は旋律を切り裂いているから
どうやっても詩になりきれないんかな
涙と汗は溶け合いながら
湿りきった風に運ばれていって
行き交った人ごみに紛れて
粉々に崩れ去っていくだけで
零れ落ちた心が黒ずんで転がる足元
下手糞な詩詠いが一人きり
がむしゃらに喉を震わす間にも
一つ一つ風に舞うのだから
僕はただ生の痕跡を残す為だけに
魂を切売りしているに過ぎないし
放り投げ諦めて目を逸らしながら
それでもただひたすらに詠うだけ
掻き消えた幻想に葬った夢の欠片が
今になって僕を脅かしているけれど
足元を見下ろしても拾えないのなら
先の無い未来に手を伸ばすほか無い
旋律を奏でられない僕だから
旋律を奏でられない僕だけど
旋律を奏でられない僕なりの
旋律を奏でられる僕になりたい
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