詞(コトバ)/流人
僕が今話す詞は
もともと遠吠えだったのかもしれない
僕が今説明に使う詞は
もともと遠吠えだったのかもしれない
僕が君に伝える気持ちも
もともと遠吠えだったのかもしれない
太古の昔、詞無き頃
現象だけが、目の前に存在し、
猿に近い祖先たちは
遠吠えで現象を捉えた
時は経ち
大きな砂時計が多くの砂を下のガラスの器に移した頃、
詞は生まれた
現象をより捉えるべく
後天的に名を与え、科学を生んだ
宇宙に羽ばたく頃
人は詞を操り
ありふれた詞に
その伝達方法の根本を忘れた
乱暴に扱われ
詞自体からその古の存在は消えた
詞とは元来、意識の共
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