薄暗い(檻)の中で/岡部淳太郎
時計の秒針を追いかけて跳躍する
目の中で止まる動き
さらには滑り落ちて
沈み
耳の中で方向を見失う
犬のようにではなく
あくまでも人の成れの果てとして
この(檻)の中で暖まる
外は冬であろうか それともまだ
秋の落葉であろうか
落ちてゆく舌の
ゆっくりとした粘着質の手触りであろうか
わからない
わからないことを
よしとして
わからない風景に思索する
わかりきったことであった
最初から
わかりすぎるほどに
わかっていたはずだったのだが
巻き戻して
もう一度同じ場面を見るのは心地よい
痛いけれども心地よい
そして滑り落ちて
沈み
死
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