なにもない/なるせ
 
掌に乗せられた錠剤ひとつで
一体何を観ることが出来る
揺りかごのなかは孤独で平和だ
何かがあるから何かがない

きみはぼくのとなりに
りんごに赤を
空に青を

ぼくにはきみを
きみには愛を
かつて無神論者がそうしたように

ここはエデン
夢が物知り顔して手まねきする
ぼくらはしっていた
ここにはなにもないってこと

りんごは枯れた
空が堕ちる
愛がない
きみがいない

そうして目覚めた太陽のない朝
きみを思い出せずにぼくは泣く

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