鏡目録/こしごえ
 


鏡に沈む
愁いは波紋となって
私を揺らす

深さの計り知れない底から
ひきあげて
ひきあげて起し
唇に秘密を添えて
黒髪を噛み薄ら笑う
見苦しくはないかと

歪なのは私であって
鏡の静寂は平面している

私のためでもなく
貴方のためでもない
身嗜(みだしな)みの
化粧を洗い流すと
素顔そのままの姿でここにいた



戻る   Point(12)