崩れゆく存在/うめバア
教の勧誘も
インチキ商法の謎トークも
もう、誰もあたしを気にもとめません
あたしは道の端をゆっくり歩き
何百万もの人生は、あたしの横を
ただ過ぎ去っていきます
雑踏の中では、人をよけて歩いています
ガツンとぶつけられるとそのたびに
豆腐みたいにやわらかい魂が
ぐちゃぐちゃになってしまうのです
あの人達にはあたしが見えないのだから
しかたがありません
ちょうどさきほども、
重くて黒いアタッシュケースの
サラリーマンにぶつかりまして
あたしの魂、だいぶ破損しちゃいました
そうそう、あたしは
崩れゆく存在なのです
もうすぐよれよれになって
綿くずみたいにふわっと
吹かれてしまいそうです
公園通りを流れ歩き
道玄坂をのぼり
円山町のホテル街で
ふぅっとため息をつく
何百万の人生が
あたしの横を通りすぎていく
今はまだ、
その感触を
さらさらと
味わっています
11月2日水曜日午後5時37分
あたしは死にました
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