猫を轢く/チアーヌ
 
でした。
次の日には、もうそんなに猫のことで悲しい気持ちにはなりませんでした。
わたしの母親がいうには、寂しい霊というのは、「悲しい、悲しい」と思ってくれる優しい人についてくるというのです。だから変に道端で死んでいるものに情をかけすぎてはいけないと言っていました。

ところで、わたしも猫を轢いたことがあります。20半ばで、仕事をしていて、通勤に車を使っていた頃のことでした。
わりと広い道路でしたが、住宅街の中でした。仕事帰りで、夜の11時ごろでした。
高速道路ではないので、照明なんかなくて、暗い道でした。
そんな暗闇の中を、確か50キロ程度で走行していたと思います。すると、ひょいと左
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