灰色/沢村 俊輔
ぼくの誕生は白だった
白は何事にも弱く
ちょっとした埃でも
すぐに汚れてしまい
“まぶしい純白 ”と言われたのは
ほんの一瞬だった
ぼくは
成長とともに
すぐに
泥水をかけられたり
赤や青の絵の具で
いたずら書きされたりで
もはや、白でなくなっていった
そのたびに
純白に戻そうと
一生懸命に洗うのだけれど
洗っても
洗っても
一度汚れた白というは
くすんだ灰色にしかならない
あのまぶしい純白には戻らない
だから
ぼくが怠けて
このまま洗うのを止めたとき
たちまち、この灰色は黒になる
別にきれい好き
というわけではないけれど
たとえ
汚れてしまったぼくが
どす黒い灰色にしか戻らなくても
あのまぶしい純白を忘れずにいたいから
このうす汚れてしまった灰色を
ぼくは洗い続ける
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