錆/錯春
 
せない
貴方はきっと思い出せるだろうに
間接照明 灰皿 
貴方は
最近ワケも無く呟く
僕はなるべく気の無い振りをしながら聞き漏らさないよう
アイスを舐めながら
聞かない振りをする

      ***

貴方は部屋着でズボンを穿くのが苦手で
抱きかかえられた僕の足は白い肌の上に
当然のように怖気づく
貴方がくわえ煙草のまま
器用に僕の爪を切る
見るものが無くなって
赤紫の眼鏡のふち 黒い石のピアス 溶けかけたアイス 長い 後れ毛
そんなものばかり

      ***

「明日は2現から教職のゼミなんだ」
「じゃぁ朝ごはんは僕が作るよ」
「どうせ起き
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