尾崎喜八「山の絵本」を読む/渡邉建志
」より
さいごに、そのものずばり、尾崎喜八が山と音楽の類似・関連についてつづった散文を取り上げたい。
音楽が人に巻き起こす連想は人によって違う、スキー好きには、ベートーフェンのエロイカのスケルツォーが滑降の壮快さに思えるらしい、だが違うものを見る人もいるだろう。ラヴェルを聴いた婦人が「この音楽は私に一つの画因(モチーフ)を暗示する」といってひどく興奮していたらしい。その人はデザイナーだったので、そのラヴェルがどのような図案になったのか、とても気になるところだ、という。このように、例はいろいろあるが、音楽が想起させるイメージは人の職業や生活や関心事によって違いがあるのは当然である。そこで
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