尾崎喜八「山の絵本」を読む/渡邉建志
 
ではほとんどうしなわれてしまったきよらかさなのではないでしょうか。


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「高原にて」より


さすがアンダンテ・マエストーゾの碓氷峠の登りも終る。 p.189

アンダンテ・マエストーゾの峠である。ううむ。これも暗誦ですね。 
さて。音楽は続く。

 八風山の低いのを笑ってはいけない。あれでもあの獅子岩を、風速二十メートルという烈風の日に一人で攀じ登った時、僕はベートーフェンの「第五」のフィナーレを夢中になって歌っていたものだ。きっと、自分自身を激励するためだったろう。

激しくやられました。激しく、やられました。こういう人が戦前にはきちんと
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