タレー 3/狸亭
 

よあけの、ふかいしずかなタレーの中にも、    
やりきれない嫉妬がまっていて、
ほんのわずかなぼくの不在をうらんでいて、
おそいかかってきたのだ、手にも脚にも。

ひさしぶりの海水の感触にすくなくとも、
ぼくは安堵のおもひをしずめ、まじわっていて、
するどく熱い悪意にとつぜん、この身をさされてみて、
あわてふためいて岸辺におよぎつこうにも、

未練にからまれ、時間がとまる。
あれはくらげか、うみへびか、ゆるやかな、はげしい
うねり。腕という腕が赤い筋にそまる。

脚という脚にひろがるアブノーマル
おぞましい触手のまっかなジェラシー
かろうじてにげかえり、ぼくはベッドにうずくまる。

(押韻定型詩の試み 35)


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