とうろく/たもつ
るのか様子がわからぬ
ならば、とそこは幼い頃を山の中で過ごしたとうろく、
大きな樫の木に登り
中村の頭、頭、頭、の連なりの先を見晴らしてみる
大きな川が流れていて中村が次々と入水しているのが見える
川を渡るのが目的ではなく、川を流れていくのが目的
であるかのように川に入った中村は
抵抗することもなく流されていく
水を飲みすぎ大きく腹を膨らませながら流れていく中村
大きな岩にぶつかりぱっくりと割れた頭の中村
その光景が大変なことなのか
それともどうでも良いことなのか
とうろくは皆目検討もつかない
とりあえず番頭に知らせなければ
と、来た道を走る
途中、そういえば厠に行くところだったのだと思い出し
道の端で立小便を始める
ああ、小難しいことを知らないというのは幸せなことかもしれない
小水が抜けていくと同時に頭が空っぽになっていく気がして
首を振ってみる
耳垢のこそばゆい音ばかりが聞こえる
戻る 編 削 Point(12)