とうろく/たもつ
 


中村が集団となって土ぼこりをあげながら
ひなびた宿場町を走る
中村が健脚だとは聞いていたが
この地で生まれ育った番頭ですら
中村がどこに行こうとしているのか知らない
おい、とうろく、ちょいと見ておいで
丁稚奉公のとうろくは何処かに行く途中だったが
日ごろ目をかけてくれている番頭の言いつけならば仕方ない
草履をつっかけて中村の後を追いかけていく
いったい何里走ったことか
中村の脚は次第に鈍り始め
やがて何かの順番を待つかのように
すっかり動かなくなった
とうろくは伸びをしたり飛び跳ねたりしてみたが
自分より背丈のある中村が邪魔になって
先の中村がどうなっているの
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