白いゆげ/服部 剛
弱々しい暗雲はほんとの心を覆(おお)い隠し
自分ばかりを正しいと肩をいからせながら
うつむく人の前を通り過ぎてしまう
真っ白な空間に身を置けば
きっと僕は汚いヘドロの染(し)みになる
独りきりの公園のベンチ
白いゆげが昇る
たこ焼をほおばりながら
ゆっくり想い巡らせば
物忘れの頭の中に
ひとつふたつと浮かんでくる
僕のあやまち
みっつよっつと浮かんでくる
周囲の人々が僕に差しのべるいくつもの手
生きることの速さに追いつこうと
争いそうになったら
思い出そう
透明パックの中に微笑(ほほえ)みを並べて
白いゆげで僕のしょげた涙目をあたためてくれたたこ焼を
透明パックを空にした
僕のうすっぺらな胸の内に
うつむく誰かをあたためられそうな
白いゆげが湧いてくる
* 自家版詩集「明け方の碧(あお)」(01年)より
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