春、晴れた日に/大小島
 
大きくふくれあがった木がささやく
僕はここに居てしまった。
君もそこに居て僕を見ている。

人間のぼくは、おおきな木にささやく
君は本当に大きいね。
ぼくが生まれたときにも、そんなに大きかったんだろうね。

そうだよ。木がささやく
君がいないときから、こうして僕は立っている。
じゃあ、ぼくが言う
ぼくがいなくなってからも?
木がささやく
だろうね。
なんだか、不思議な気分だろ。
大きく広げた枝の間から太陽と青い空が
見える

木が言う
もう、君も僕も
ここにいる以上、何も残さず消えることはできないよ。
ぼくがなんだか震えると
おおきな木もざーっと震え
木の葉が数枚落ちてくる
そうだね。
一瞬茶色い木と緑の葉のすき間すき間に
見えないはずの顔や手や足や幹が
一瞬、見える、笑う
ぼくは泣いても笑っても
ここに居てしまったんだもの。

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