痕/松本 卓也
いつ頃からそこに在って
何の為に生まれてきたのか
思い出す事もできなかった
痛みを産み出す事も無く
時折耐えがたい痒みを発し
忘れかけた存在を思い知らせる
なぜ治らないのか
なぜ治さないのか
紫に変色した薄皮
白く刻まれた模様
赤く滲んだ斑点
いずれ忘却の中に消えるのか
果てる時迎えるその一瞬まで
変わらず張り付いているのだろうか
小さくなっているようで
何も変わってないようで
苦しくも無く辛くも無く
少し痩せた左足に
当たり前のように在り続けるなら
新しい傷が消え去っても
変わらずに在り続けるのかな
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