ほんのふたり/銀猫
 
秋時計の振り子は密やかに
行きつ 戻りつ
たった一人の呼吸では
遮るものがない

少しずつ白くなり始めた町で
掌にほうっと暖をくれるのは
燃料のぎっしり詰まったストーブではなく
ほんのふたりで語らうことだろう

わたしの背でトパーズは生まれ
きみの傍らで金色は育った


去年のセーターに袖を通せば
パチパチと冬が声を上げ
猫の夏毛を震わせる

少しずつ凍り始めた町で
それでもこころがじんわりしているのは
手繰り寄せた糸の先が
きみの指先で張り詰めていたからだろう

ポプラの枝先で秋は名残り
きみの傍らで冬は色彩を奏でる


ほんのふたり

温かい

指先




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