時代/たもつ
 

1.
顔を洗って髭を剃ると
私の顔は鏡の中にあった

洗面所の窓
その外にはいつも外があって
夜がまだ薄っすらと残っている

貞淑なやす子は朝食の後片付けをしている
今までの毎朝を
そしてこれらの毎朝を
貞淑であり続けるかのように

身支度を終え玄関で靴を履く私は
行く先もわからぬまま今日も勤めに出る
そう言えば先ほどまで
ミルクのようなものを飲んでいた気がする

扉の向こうでは
戦争が始まっている




2.
街にはたくさんの人がいて
足音を立てることもなく歩いていた

足音は
いったい何時から
どこかに行ってしまったのだろう

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