昨日の今日/むらさき
あたしも とうなづくだけだった
そんなあんたの右手には鳩が抱かれて
左手にはコンパスがあるのが見えた
コンパスの針はぐるぐると嬉しそうに回り
続けるのをあたしはなるべくみないように
そっぽをむくのだった そしていつか聞いたことのある
趣味の悪い童謡をのどの先で歌うのだった
日曜日の庭先には決まって湿っぽい黒い土がたくさんの
雑草と高価な草をたくさん生やし続けた
あたしはなんだかとてもうれしくなって
植木鉢に詰め込んでいた純粋な花たちを
そっと隣に置いてやるのだった
あんたはそんなあたしの背中をえくぼと一緒に
見つめるのだった
主語と動詞がくんずほぐれつあんたとあたしの
微妙な距離をいったりきたりしていた
それはまるで片田舎の田んぼをのんびりと
散歩するおばかな蚊のようだった
いってらっしゃい
いってきます
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